いまだにウッカリして甘いお茶なんて飲んだりしたり 

筒井康隆『創作の極意と掟』(講談社)を購入。筒井の「小説作法」とあってはこりゃ読まな、と近くの居酒屋で読み始める。仮フランス装の瀟洒な装丁。柔らかな手触り。飲みながら片手で読むのに軽くてとても良い。目次を見ると「凄味」「色気」「迫力」「幸…

花は自分が美しいことを知らない

さて、山本夏彦によると明治の昔、「岩野泡鳴は桃中軒雲右衛門の浪花節をきいて、しきりに落涙して、拳固〔げんこ〕で涙をぬぐいながら、この涙はウソだウソだと、言いはってきかなかったという」*1が、本日、私はでたばかりの成田美名子の『花よりも花の如…

猛暑に夏風邪

バカなため夏風邪をひき一週間近く寝込む。体温なのか気温なのかわからない暑さのなか仰臥。とめどもなく汗がでてくる。お盆ということも相俟ってか、死んだ祖父が夢にでてくる。勘弁してください。動くこともままならず、熱で頭のゆるむままに布団の中で『…

こんなグルグルまわる家いりませんよ

森見登美彦『聖なる怠け者の冒険』読了。およそ二年ぶりの新作。堪能する。オビを見ると「森見登美彦作家生活10周年」とあり、一驚。10年! はじめて『太陽の塔』で森見作品に触れ、一読後、当時一緒に暮らしていた人に「とうとうわれわれの時代の作家が生ま…

こんな夢を見た。

なだらかな坂道を下っていると、向こうから若い女がやってくる。 だいぶ近くに来たので見てみると、真っ白いスカートに薄い青色の半袖をあわせている女は、薄紅色の傘をさしている。 はて、この晴れの日に傘とはと思っていると、ぽつりと、何かが顔にあたり…

立ち読みではあるものの。

今週のモーニングの、よしながふみ「きのう何食べた?」を読んでいると、どこかで見たようなカフェが。矢吹が行きたがり、わざわざ電車で移動してゆくカフェ。ん?としばし黙考。内装と店の雰囲気から見るに、もしかしてA-NE CAFE(をモデルにした店)ではな…

昔書いた文書が大量に見つかりびっくりする。やはり整理は必要か。しかしもう他人が書いた文書みたいだ。

J=F・リオタールはその著書の中でモダンとポストモダンの文化を特徴づけるために、大きな物語/小さな物語という用語を提出している。 大きな物語とは、歴史主義の議論ではマスター・ナラティブとも呼ばれるが、その典型的な例はキリスト教の終末論や、生…

隗より始める、べきか。

本棚を買おうと思ったのだ。 引っ越してきてはや10ヶ月。思えば当初は、一冊も手放すことなく一緒に新居にきてしまった本を自分にとって使いやすく、目的別、ジャンル別に並べることを夢見ていたのだけど、気づけばはや10ヶ月。 夢だった。 路線を変更し、と…

珍しいものをみた。

過日、時間ができたので近所の公園を散歩する。引っ越してきてからわりにちょくちょく来ている公園なのだけど、しばらく時間がなかったので、久しぶりの散歩。空気は肌寒く、むきだしの鼻の感覚がなくなっていく中に、土をふむ感触や、目にはいる木々の色合…

梅雨ってこんなにスチーム・サウナだったっけ?

週末に京都へ行く。夜行バスで。「またかよ」「まただよ」という友人とのやり取りにもめげず。出発は21時。ぎりぎりまで飲みかつ食べていたらよい感じにできあがり、バスの中はほとんど記憶なし。隣席が空いていたこともあり、夜行バスとは思えないほど快適…

部屋に見知らぬキノコが生えそうな湿り気。

過日、図書館で「SFマガジン」のバックナンバーをひっくりかえし、あっちゃこっちゃとコピーをとっている最中、意識の端になにか気になる文字列がひっかかったように思いページをめくる手をとめ紙面を見ると、第17回ハヤカワ・SFコンテストの最終選考発表…

「濃すぎる光を持てあましてるのね」アイスクリームなめつつ見る月(安藤美保)

先日友人達と飲んでいて、木村紺『からん』の話になった。 一巻の第〇話に、関東にいる人達がでてくるが、あの伏線は回収できるのか。できるとしてもこの展開の速度を考えると、いったい木村紺はどれくらいのスパンでこの物語を考えているのか。やたらに構築…

中国行きのプレイボーイ

東京に山はない、なんてことは勿論なく立派にあるわけだけど、でもやっぱりどうもしっくりこないよな東京の山は、などと思ったのは帰省途中の車内で那須塩原に入った途端にあらわれた雪をかぶる無骨な山を間近に見たからだったりするのかもしれない。あー、…

みちのくの星入り氷柱吾に呉れよ 鷹羽狩行

年末、京都に遊びにいき、病院にいくという貴重な経験をする。京都の病院。看護婦さん(今は看護士さんというのか?)が舞妓さんの格好をしていたらどうしようとどきどきしていたら、そんな人はいなかった。同行の人にいうと「そんな人おるわけないじゃない…

時折自分の記憶力が悪かったということを忘れてしまうくらいに記憶力が悪い。

朝起きると妙に気だるく寒気がし、風呂からあがる頃には節々が痛み鼻水がでるわ咳が止まらぬわ眩暈がするわでまるで風邪のようだと思ったら本当に風邪だった。久しぶりに病院にいったら安静をもうしわたされる。一人暮らしの悲しさで上げ膳据え膳なんてのは…

君には最大限の自由がある。ただし我々が認める範囲で。

本屋の中をふらふら歩いていると面陳された本の表紙にふっとすいよせられる。はじめ思ったのはあの有名なパレンケの翡翠の仮面? いや違う、巨大な……これはなんだろう……赤ん坊の顔? と、妙に気になり鴻池朋子『インタートラベラー 死者と遊ぶ人』(羽鳥書房…

最近読んで面白かった文章。

一般にすぐれた年長者との出会いは、自分のモデルとの出会いという意味で自己確立の契機であると同時に、相手の圧倒的な影響力によってそのモデルの中に自己を見失う自己喪失の危機をも意味する。とくに分裂病質者が相手から適当な心理的距離をとることによ…

私とかかわる人達の中にその数だけ「私」が存在するという恐怖

後出しじゃんけんのような話でまことに恐縮ではあるのだが、中村明日美子『ダブルミンツ』(茜新社)を読んでいて、これは名前をめぐる物語ではないのかと思っていたら、あとがきでそのようなことが書かれていて、普段は「いやいや物語と作者は別物ですよ。…

白き午後白き階段かかりゐて人のぼること稀なる時間(葛原妙子) 

アスファルトが溶けだしそうな暑さの中、街をあるいていたらふとこの歌を思いだす。別に夏の歌だというわけではないと思うのだけど、夏のあの大気がゆらめく中でもの皆白く輝いているような眩暈のするようなそんな一瞬に、すっと地上から伸びた階段。時間の…

もう一生分のくるりは聴いた、と友人は言った。

目的に優先順位をつけるとしたら、 1、京都で友人に会い、一緒に大覚寺の五大明王展を見にいく 2、みやこめっせで春の古書市を見る 3、大阪で友人に会う の順だった関西旅行。その全てを叶えられたので良い旅行だった。 出発は4月30日の夜行バス。いつも夜行…

真っ直ぐな道すぎて寂しい午前11時。

目覚めてしばしぼうっとする。窓の外の陽気に誘われ外出し、あまりにも暇なのでそのまま歩きだす。黙々と歩き続けること6時間。一応の目的地を定め歩いていたのだけど、小休止ついでに何気なく路面の市街図を見ると思っていた方向と90°ずれて歩いていた事に…

誤植に爆笑。

スーザン・ブラックモア 山形浩生/守岡桜 訳『「意識」を語る』(NTT出版)を読んでいる。「意識」とはなにか、という問題についてのインタビュー集。でてくる顔ぶれは、哲学者から数学者から精神科医がいるかと思えば生物学者もいるという多彩さ。で、い…

森鴎外に説教されるという夢をみる。私はいったいなにをしたのだ?

恩田陸の作品を読んで、これは予告編ですか、本編はまだですかと思うというのは別に今にはじまった事ではないので別によいし、いま読んでいるものをあとにつづくより大きな物語の予告編として読ませてしまうところはこの作者の持ち味だとも思うのでそれもよ…

友人が「大枚をはたく」を「玳瑁をはたく」だと思っていた事が明らかになった。「だって玳瑁って貴重じゃない」といわれた。常識のエアポケット。

電車にゆられていると、となりの人がかばんから文庫本をとりだした。こういうとき、何を読んでいるのかとのぞき見てしまうのはどうにも品がよくないと思うものの、気になるものはしょうがない。ついつい横目でちらちらと見てしまう。カバーがかかっていてタ…

飲み屋にたなびく「樽生名人のいる店!」という幟が「柳生名人のいる店!」と見えた冬の昼下がり。

何故なのかと彼の考えを聞いて全員が賛同する訳がないんだ しかし 中には聞いておきながら自分が納得しないと怒ったり否定したりする愚者がいる 人に説明を求めて解答が常に得られると思っている蒙昧な者も多い (中略) 知る事が全ての人に幸せをもたらすと…

やたらと腹回りがゆるく感じられ、穿いたパンツがずり落ちてくるのを、あらわたし痩せたのかしらと思いきやベルトをつけ忘れていただけだったと気づいた瞬間の悲しみを何に喩えよう。

最近はなんだか日付の感覚がおかしくなり、月日の流れがやたらに早く感じると思ったら実際には2、3日しかたっていなかったり、そうかと思えばあっという間に一週間ならばともかく一月近くも経っていたりしていてこれは何ぞと驚いたりと、これはあれか、何…

駅前で「俺は歯の欠けた歯車なんだ!」と絶叫している若者がいた。なんだかわからないけど頑張れと思った。

最近、古川日出男『聖家族』(集英社)、保坂和志『小説、世界の奏でる音楽』(新潮社)、中井久夫『アリアドネからの糸』(みすず書房)、アルベール・カミュ『カリギュラ』*1(ハヤカワ演劇文庫)を併読していたら何がなにやらことばが色々と入り混じりえらいこと…

一般に旬は秋だといわれるが冬に喰ってもカボチャはうまい

『リバーズ・エッジ』の終盤に「この街は悪疫のときにあって」ではじまる、とても、とても素敵な詩がある。作者はウィリアム・ギブスン。そうあのサイバーでパンクなSF作家のウィリアム・ギブスン。『リバーズ・エッジ』を読むまで、彼が詩を書いていたと知…

嘘のような話

ヒヨコ舎編『本棚』の2巻がでていた。帯に「cocco」とみえて、少し驚く。寡聞にしてあの「cocco」がこの本にのるほどの本好きだということを知らず、でもあの歌詞をつくる感覚というか能力を思えば本好きであってもなんの不思議もなく、知らなかったのはこち…

おれはさあフランスママのアイディアは数千年古いと思うな あたしはちがうあたしは数千年未来のアイディアだと思ったわ

品川をでた瞬間から嫌な予感がしていた、とはいわないけれど予定では名古屋まではたどりつけるはずが岡崎で終電がなくなり、そういえば右も左もわからない町を夜の11時過ぎに歩き回るというのは中々に心許ないものだったな、ということを思いださせてくれた…