隗より始める、べきか。

 本棚を買おうと思ったのだ。
 引っ越してきてはや10ヶ月。思えば当初は、一冊も手放すことなく一緒に新居にきてしまった本を自分にとって使いやすく、目的別、ジャンル別に並べることを夢見ていたのだけど、気づけばはや10ヶ月。
 夢だった。
 路線を変更し、とりあえずダンボールからすべてだすことを目的に、手当たり次第に本棚に詰め、あふれたものを床に積んでいった結果、堆積した本は後戻りができないところまできてしまった。
 そこで思ったのだ。そうだ本棚を買おうと。そして、大事な本を並べてみようと。
 思えばこれまで、自分にとって大事な本を、それだけをまとめてならべたということがない。誰にでも周期的に読みたくなる本があると思うのだけど、多分にもれず私にもそんな本がある。しかしこれまでは「あれが読みたいな」と思っても、どこにあるかわからず、結局図書館で借りるか、見つけるまで延々と本の山を掘ることになった。もうそんな思いはしたくない。良い機会だし、まず自分にとって特別な本をまとめて収納し、そこから他の本の整理をしてみようと思ったのだ。だんだんとよい考えに思えてくる。
 そのためには本棚が必要だ。せっかくだからステキ本棚を買おう。それも新品のぴかぴかしたものではなく、できれば昭和初期くらいの少し古い落ちついたものがいいなと、暇を見つけては古道具屋をまわるようになった。
 二月ほど探しまわった結果、ある古道具屋で気に入ったものを見つけ、値段との折り合いもつき購入を決める。くさびでとめるタイプのもので、ワックスで仕上げてあるのか、柔らかな木肌が感じられる。店主には配送をすすめられるが、すこしでもはやく本をならべたいと思い、ぐるぐると梱包してもらい、そのまま担いで帰る。電車で6駅、そのあと徒歩。それほど重いものではないといえ、電車に本棚を持ち込んだのははじめての経験。良い経験になりました。もう二度とすまいぞ。
 帰宅し、堆積した本を崩し、混沌とした本棚を探りながら、あ、これならべよう、あ、これこんなところにあったんだ、と二時間ほど格闘し、候補を絞る。試行錯誤し並び順にあたまをひねること小一時間。ようやく収まる。いれたかったけど入らなかったり、見つからなかった本が多々あるけれど、あちらをたてればこちらがたたずで中々に難しい。こんな感じになりました。はじめてこういう形でならべてみたけど、自分の嗜好がわかって面白い。


・一段目(左から右に。見つからない巻が多かった)
佐藤史生『死せる王女のための孔雀舞』(新書館
佐藤史生『やどり木』(新書館
佐藤史生『金星樹』(奇想天外社)
佐藤史生『夢見る惑星 1〜3』(小学館
佐藤史生『ワン・ゼロ 2・4』(小学館
佐藤史生『打天楽』(小学館
佐藤史生『精霊王』(小学館
佐藤史生『鬼追うもの』(小学館
森脇真末味『Blue Moon 2・3』(小学館
森脇真末味『UNDER 1〜2』(小学館
森脇真末味森脇真末味傑作集2 踊るリッツの夜』(小学館
森脇真末味森脇真末味傑作集3 ゼネツィオの庭』(小学館
森脇真末味『夢食いドガ』(朝日ソノラマ
吉野朔実『グルービィ ナイト』(集英社
吉野朔実『王様のDINNR』(集英社
吉野朔実『HAPPY AGE(前編)(後編)』(集英社
内田善美『秋の終わりのピアニシモ』(集英社
吉野朔実『ECCENTRICS 1』(小学館文庫)
吉野朔実『ジュリエットの卵 2』(小学館文庫)
吉野朔実『少年は荒野をめざす 1〜4』(集英社文庫
森脇真末味『おんなのこ物語 2〜3』(小学館文庫)
シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵』(ちくま学芸文庫
木地雅映子『悦楽の園』(JIVE)
吉野朔実瞳子』(小学館


・二段目
中井久夫『記憶の肖像』(みすず書房
中井久夫『家族の深淵』(みすず書房
中井久夫『樹をみつめて』(みすず書房
中井久夫『関与と観察』(みすず書房
中井久夫『時のしずく』(みすず書房
中井久夫『最終講義』(みすず書房
中井久夫『私の日本語雑記』(みすず書房
蜂飼耳『空を引き寄せる石』(白水社
蜂飼耳『秘密のおこない』(毎日新聞社
松浦寿輝『散歩のあいまにこんなことを考えていた』(文藝春秋
松浦寿輝『青の奇跡』(みすず書房
古井由吉『日常の"変身"』(作品社)
古井由吉『言葉の呪術』(作品社)
古井由吉『山に行く心』(作品社)
古井由吉『日や月や』(福武書店
古井由吉『招魂のささやき』(福武書店
古井由吉『小説家の帰還 古井由吉対談集』(講談社
井筒俊彦『叡智の台座 井筒俊彦対談集』(岩波書店
エリック・ホッファー『魂の錬金術 全アフォリズム集』(作品社)
杉本博司『苔のむすまで』(新潮社)
杉本博司『現な像』(新潮社)
佐々木幸綱・編『日本的感性と短歌 短歌と日本人2』(岩波書店
坪内捻典・編『短歌の私、日本の私 短歌と日本人5』(岩波書店
岡井隆・編『短歌の創造力と象徴性 短歌と日本人7』(岩波書店
米内包方『盛岡藩改訂増補古武道史』(非売品)


・三段目
山尾悠子『角砂糖の日』(深夜叢書社
山尾悠子山尾悠子作品集成』(国書刊行会
山尾悠子『歪み真珠』(国書刊行会
内田善美草迷宮・草空間』(集英社
内田善美星の時計のLIDDELL 1〜3』(集英社
ユリイカ 総特集 矢川澄子・不滅の少女』(青土社
矢川澄子『静かな終末』(筑摩書房
矢川澄子『いづくへか』(筑摩書房
二階堂奥歯『八本脚の蝶』(ポプラ社
永田紅『ぼんやりしているうちに』(角川書店
永田紅『北部キャンパスの日々』(本阿弥書店
穂村弘『シンジケート』(沖積舎
穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』(小学館
穂村弘『短歌の友人』(河出書房新社
岡井隆『E/T』(書肆山田)
吉増剛造『静かな場所』(書肆山田)
吉増剛造『生涯は夢の中経』(思潮社
松浦寿輝折口信夫論』(大田出版)
吉増剛造『緑の都市、かがやく銀』(小沢書店)
岡井隆『注解する者』(思潮社
通崎睦美『天使突抜一丁目』(淡交社
通崎睦美『通崎好み』(淡交社
吉野朔実『神様は本を読まない』(本の雑誌社
吉野朔実『LA MASCHERA』(集英社
吉野朔実『天使の声』(集英社


・四段目
パンテオン 上・下』(萌木社)
種村季弘『壺中天奇聞』(青土社
種村季弘『夢の舌』(北宋社
種村季弘『器怪の祝祭日』(沖積舎
種村季弘アナクロニズム』(青土社
種村季弘『影法師の誘惑』(青土社
種村季弘『書国探検記』(筑摩書房
種村季弘『小説万華鏡』(日本文芸社
種村季弘『箱抜けからくり綺譚』(河出書房新社
種村季弘『晴浴雨浴日記』(河出書房新社
種村季弘東海道書遊五十三次』(朝日新聞社
種村季弘『雨の日はソファで散歩』(筑摩書房
種村季弘『食物読本 種村季弘のネオ・ラビリントス 6』(河出書房新社
塚本邦雄『幻想紀行』(毎日新聞社
塚本邦雄『詞華美術館』(文藝春秋
須永朝彦『日本幻想文学全景』(新書館
須永朝彦『日本幻想文学史』(白水社
日夏耿之介日夏耿之介文集』(ちくま学芸文庫
種村季弘『澁澤さん家で午後五時にお茶を』(学研M文庫)
澁澤龍彦『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』(学研M文庫)
矢川澄子『わたしのメルヘン散歩』(ちくま文庫
山尾悠子『夢の棲む街』(ハヤカワ文庫)