猛暑に夏風邪

 バカなため夏風邪をひき一週間近く寝込む。体温なのか気温なのかわからない暑さのなか仰臥。とめどもなく汗がでてくる。お盆ということも相俟ってか、死んだ祖父が夢にでてくる。勘弁してください。動くこともままならず、熱で頭のゆるむままに布団の中で『文豪ストレイドックス』(原作=朝霧カフカ、漫画=春河35角川書店)にもし海外からの来襲者がでてきたら、ということを考える。
 『文豪ストレイドックス』とは、「現代横浜を舞台に繰り広げられる異能力バトルアクション!」(公式サイトより)ということで、この説明でわかる方もいればわからない方もいるかと思うのだけど、なんというか、山田風太郎の鬼子というか、清涼院流水の直系というか、「戦国無双」(コーエーコーエーテクモゲームス)、「戦国BASARA」(カプコン)の想像力の質というか、「剣豪」(元気)の「文豪」版というか、つまりは歴史という文脈から浮遊する「文豪」という記号と「バトルアクション」という物語でなりたっているマンガ。歴史という文脈をあっけらかんと無視した設定で(絶対に出会うことの無い人物が作中で共存している)、作中の「武装探偵社」の成立の話を描かないかぎり、いくらでも(史実的な)前の時代にさかのぼれるわけで、これ、すごいな。江戸(を舞台にした)時代にしてもいいわけだし。それこそ初代は稗田阿礼とか…。異能力「古事記〔ルビ:フルコトフミ〕」とか…角川だし…、という妄想をする。
 それはさておき、80年代〜90年代のジャンプに汚染された頭としては、いずれ、外部(海外)から新たな敵が襲来し、いま敵対している二つのグループが共闘するのではと思ってしまう。
 ところで、二巻までの登場人物を史実に沿って生年順・没年順に並べてみる。

生年順
福沢諭吉(1835-1901)
国木田独歩(1871-1908)
樋口一葉(1872-1896)
泉鏡花(1873-1939)
与謝野晶子(1878-1942)
谷崎潤一郎(1886-1965)
芥川龍之介(1892-1927)
江戸川乱歩(1894-1965)
宮沢賢治(1896-1933)
梶井基次郎(1901-1932)
中島敦(1909-1942)
太宰治(1909-1948)
立原道造(1914-1939)


没年順
樋口一葉(1872-1896)
福沢諭吉(1835-1901)
国木田独歩(1871-1908)
芥川龍之介(1892-1927)
梶井基次郎(1901-1932)
宮沢賢治(1896-1933)
泉鏡花(1873-1939)
立原道造(1914-1939)
与謝野晶子(1878-1942)
中島敦(1909-1942)
太宰治(1909-1948)
谷崎潤一郎(1886-1965)
江戸川乱歩(1894-1965)
(以上、生没年のデータはwikipediaより)


 これを元にして、「私が選ぶ最強の外文作家」を考えてみる。縛りがないと面白くないので、恣意的ではあるものの、一応最大範囲で史実的に1835年(福沢諭吉の生年)から1965年(江戸川乱歩の没年)の間に死亡していて*1、なんとなく強そうな「異能力」を持っていそうな外文作家。とりあえず、こんな感じで思いつく。左からキャラクター名、歴史上の生没年、異能力名。さっそく友人に送ってみる。


メアリ・シェリー(1797-1851)「フランケンシュタイン
エドガー・アラン・ポー(1809-1849)「赤死病の仮面」
エミリー・ブロンテ(1818-1848)「嵐が岡」
イワン・ツルゲーネフ(1818-1883)「猟人日記
ドストエフスキー(1821-1881)「罪と罰
ラフカディオ・ハーン小泉八雲、1850-1904)「影」
マルセル・シュオッブ(1867-1905)「黄金仮面の王」
マルセル・プルースト(1871-1922)「失われた時を求めて
ポール・ヴァレリー(1871-1945)「海辺の墓地」
レオポルド・ルゴーネス(1874-1938)「塩の像」
トーマス・マン(1875-1955)「魔の山
魯迅(1881-1936)「吶喊」
ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)「フィネガンズ・ウェイク
ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)「波」
フランツ・カフカ(1883-1924)「審判」
フェルディナン・セリーヌ(1894-1961)「夜の果ての旅」
フィッツジェラルド(1896-1940)「華麗なるギャツビー
アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961)「キリマンジャロの雪」
(生年順。データはwikipediaより)


 これだけでもかなり強そうだけど、原作が朝霧カフカということで、このキャラもぜひ入れて欲しい。


 ラヴクラフト(1890-1937)「狂気山脈」
(あるいは、異能力は、次のものをカナで言ってルビをふって欲しい)
 「ザ・コール・オブ・クトゥルフ」〔ルビ:クトゥルフの呼び声
 「ザ・ネームレス・シティー」〔ルビ:無名都市〕


 絶対、ラフカディオ・ハーンは裏切り者だよね。国木田独歩ツルゲーネフ江戸川乱歩とポー、立原道造ヴァレリーのバトルとかわくわくするよね、やっぱりプルーストはマドレーヌをもぎゅもぎゅしていて欲しいよね、と友人にメールしたところ、「まず熱下げろ。というか寝ろ」との返信が来る。友人はいつも正しい。SFバージョンを考えたとか、ミステリバージョンを考えたとか、哲学者バージョンを考えたなどとはとてもいえない。でも、とりあえず、「異能力名で格好良さそうなのは『虚無への供物』だよね」という言葉には同意をもらえたのでよしとする。あと思ったことには、このマンガを教材にして「私の考える最強の文豪」とかやってくれぬものか。中学校とかで。

*1:できればボルヘス(1899-1986)も入れたかった…。芥川ばりのボスキャラで。異能力名「伝奇集」で、その下位能力に「バベルの図書館」「八岐の園」とか。あとサミュエル・ベケット(1906-1989)で、「名付けえぬもの」とか考えたのだけど。残念。