最近ちょっと面白かった話 その3

 今更ながらではあるが、宇月原晴明山本周五郎賞を取ったらしい。めでたい。受賞作の『安徳天皇漂海記』を始めとして、この人の作品はどれも伝奇小説のある種の理想系なので、これを機に専業作家になって、もっと書いてくれないものだろうか。量産は難しいかもしれないけど。無理かな。伝奇小説論とか書いて欲しいのだけどな。あ、選考委員の中に重松清がいてちと面白かった。
 それはさておきこんな記事をみつけた。

http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20060502bk01.htm

 古今の名著へのオマージュをいくつも織り込み、時空を超えて史実を結ぶ手法を「物語の遺伝子組み換え」と呼ぶ。


「『平家物語』から安徳天皇という核を取り出し、鎌倉時代史書吾妻鏡』や『東方見聞録』の細胞に入れたら、キメラのような奇跡的な話が生まれるかもしれない」

 この言葉に我が意を得たりと膝を叩く。これぞ伝奇小説の文法だと思う。他にも最近では佐藤賢一ジャンヌ・ダルクまたはロメ』(講談社文庫)の解説で確か石原千秋が書いていたのだと思うのだが、芥川を例に出して、佐藤賢一は伝奇小説の骨法を掴んでいるというような話を書いていて、これもしかりしかりと強く膝を叩いたものの覚えているのは膝の痛みだけで肝心の論の方は綺麗さっぱり頭の中から消えている。悲しい。引き伸ばされた固有名詞、名指す事のズレが生み出す快楽とかそういった内容だった気がするのだが、そもそも本当に解説が石原であったどうか心許なくなってきた。笊頭。