夕飯


 何だか急に水煮が食べたくなったので作る。
 正確な定義は知らないが、水煮とは中国は四川の料理で、肉や魚を辛い汁で煮込んだものをいうようだ。牛肉を使うと『水煮牛肉』、豚肉を使うと『水煮肉片』、魚で作ると『水煮魚片』というらしい。
 見た目は一見するとトマトで煮込んでいるように見えるかもしれない。赤い。青は藍より出でて藍より青しというが、赤は紅より出でて紅より赤しというか、そんな言葉があるか知らないけど、とにかく赤い。本当に赤い。『水煮牛肉』あるいは『水煮肉片』で検索し、写真を見て頂ければ分かるかと思うが、目を疑う程に赤いと思う。その上にさらに赤々しい唐辛子と黒々しい山椒(花椒)が山と盛ってある。
 一般に四川料理の味は「麻辣」といわれる。「麻」は山椒の痺れるような刺激、「辣」は唐辛子の辛さのことで、この二つの味が四川料理の真面目といえるが、『水煮』という料理は遺憾なくその面目を施していると思う。一口食べると汗が吹き出し、二口目で舌は痺れ、三口目には、困ったことにご飯が手放せなくなる。辛い。痺れる。だけど旨い。
 以前中国を旅行したとき食べて、辛いもの好きの私は気に入り、帰国してからあの味をだそうとあれこれと試したところ、今ひとつ漢方臭さとでもいうのか、あの独特の香りを出す香辛料が分からず、そしてそれは今でも分からないままなのだが、まあ、比較的近い味が出せるようになったかと思っている。

  • 水煮
  • 材料
    • 豚肉(お好みで。今回はロースの薄切りを使用)(200g)
    • 水菜(本当は青梗菜かニラを使いたかったのだが、水菜が安かったので)(一束)
    • 焼豆腐(普段は入れないけど何となく)(一丁)
    • ニンニク(一かけ)
    • ショウガ(お好み)
    • 豆板醤(大匙5杯位。まあお好みで)
    • 山椒(本当は「花椒」が良いんだけどね)(同上)
    • 一味唐辛子(同上)
    • 片栗粉(適量)


作り方。
 豚肉を好みの大きさに切り、片栗粉をまぶして置く。中華鍋に油を入れ、みじん切りにしたショウガ、ニンニク、豆板醤を入れ点火。極弱火で焦がさないように香りを出す。ある程度炒めたら火を強くし、中華鍋半分くらいまで水を入れ、醤油を入れ、あれば適当にガラスープのもとなんかを入れ、煮立たせる。煮立ったら豚肉、焼豆腐を入れ煮込む。10分くらい煮立てたら、水菜を入れ軽く火を通し器に移す。最後に、一味唐辛子と山椒をこれでもかと云うくらい振り掛ける。鍋で油を熱し、一味唐辛子および山椒めがけて振り注ぐ。景気の良い音がして出来上がり。


 今日の夕飯はこれに納豆とご飯。水煮を食べる。か、辛い。でもご飯が進む。油を結構使っているのでダイエット中だと良くないかもしれないけど、まあ、カプサイシンも信心から。