9月の気になる文庫たち

朝日文庫
『柳生薔薇剣』荒山徹
岩波現代文庫
『明治精神史(上)』色山大吉
『「女縁」を生きた女たち』上野千鶴子
岩波文庫
フランク・オコナー短編集』フランク・オコナー 阿部公彦
・ホラー文庫
『闇の守護者 ロスト・ゾーン』樋口明雄
『禍記』田中啓文
河出文庫
弾左衛門の謎 歌舞伎・吉原・囲内』塩見鮮一郎
『暗い旅』倉橋由美子
・学研M文庫
『伝奇の函 吸血妖鬼譚 ゴシック名訳集成』東雅夫 バイロンほか
講談社文芸文庫
『白山の水 鏡花をめぐる』川村二郎
『夜明けの家』古井由吉
講談社文庫
タイタニア(1)』田中芳樹
『千々にくだけて』リービ英雄
光文社文庫
『凶宅』三津田信三
異形コレクション 京都幻想』井上雅彦
・古典新訳文庫
『寄宿生テルレスの混乱』ムージル 岡沢静也
集英社文庫
『本当はちがうんだ日記』穂村弘
『エロス』広瀬正
新潮文庫
『ポーの話』いしいしんじ
『柳生雨月抄』荒山徹
おとうさんといっしょ川端裕人
『私たちがやったこと』レベッカ・ブラウン 柴田元幸
ピュアフル文庫
『光車よ、まわれ!』天沢退二郎
ちくま学芸文庫
『奇談異聞辞典』柴田宵曲
『わたしは花火師です フーコーは語る』ミシェル・フーコー 狩野秀之
『言葉を育てる 米原万里対談集』米原万里
・中公文庫
『女妖記』西條八十
創元推理文庫
熾天使の夏』笠井潔
・ハヤカワSF文庫
ディファレンス・エンジン(上)』ウイリアム・ギブスン&ブルース・スターリング 黒丸尚
ディファレンス・エンジン(下)』ウイリアム・ギブスン&ブルース・スターリング 黒丸尚
『天の光はすべて星』フレドリック・ブラウン 田中融二
『宇宙飛行士ピルクス物語(上)』スタニスワム・レム 深見弾
『宇宙飛行士ピルクス物語(下)』スタニスワム・レム 深見弾
『死よりも悪い運命』カート・ヴォネガット 朝倉久志
・ハヤカワ文庫NV
『シャドー81』ルシアン・ネイハム 中野圭二
・ハヤカワepi文庫
時計じかけのオレンジ(完全版)』アントニイ・バージェス 乾信一郎


 とりあえず早川がすごい事になっている。今月の末にはカート・ヴォネガット『追憶のハルマゲドン』もでるし、ヴォネガット祭り、おまけに『たったひとつの冴えたやりかた』が改訳で、いや、それは別にぜんぜん良いのだけど、単行本でだされるらしい。何故だ。そういえば常々、岩本隆雄『星虫』は「たったひとつの冴えたやりかた」のオマージュというか、あの終わり方に対しての別バージョンの提示かと思っているのだけどどうなのだろう。あとは高野史緒『赤い星』は内容紹介を見ただけで爆笑した。なんだろう『モナリザ・オーヴァドライヴ』? とても楽しみ。
『伝奇の函 吸血妖鬼譚 ゴシック名訳集成』は『成暴夜幻想譚』がとても良かったので期待していたら、こんなことがブログに書いてあって残念。気長に待ちます。
タイタニア(1)』は、あれでしょうか、えーと、完結させるつもりなのでしょうか……。
 そういえば上京したての頃、予備校にテキストをもらいにいったら『熾天使の夏』を小脇にかかえて颯爽と歩いている人がいて、おお、やっぱり東京は違うずら!とか思ったりしたのだけれど、今思うにその人が変わっていただけだったんだろうな。その後、見たことないしそういう人。この間、笠井潔の『青銅の悲劇 瀕死の王』を読んだのだけど、とりあえずクイーン好きはかなりにやりとするのだろうな、と思ったり。タイトルからしてもう。語り手が宗像冬樹という小説家で、これで「天啓シリーズ」と『黄昏の館』と「矢吹シリーズ」が一気につながってしまい、天啓教というキーワードを入れれば「大鳥安寿シリーズ」も芋づる式にずるずるとつながってきて、更には作中人物の宗像冬樹が書いていたという長編伝奇作品を「ヴァンパイヤー戦争」と無理やりに繋げば……って、さすがにそれは無理やりだけど、今回の作品にでてきた一族と「古牟礼一族」をつなげれば色々と繋がってしまう、おお、なんと壮大な笠井ワールド!というような事を妄想していたら栗本薫を思いだす。似てないかこの二人。「伊集院大介シリーズ」と「ぼくらシリーズ」と「魔界水滸伝」と「グイン・サーガ」が『魔境遊撃隊』で繋がった瞬間には驚愕したものだ。
『光車よ、まわれ!』がいよいよ復刊! ジャイブ凄ぇよ! ありがとうジャイブ! ピュアフル文庫って、なんだかちょっと恥ずかしくて書店で手に取るのを躊躇っていたのだけどあやまる。悪かった。これでちくま文庫版を買わなくてすむ。よくいく古本屋にずーっとおいてあったのだけど微妙に値段に妥協できず脇目に見ていたのだった。それにしてもジャイブ、ありがたい。以前も木地雅映子『氷の海のガレオン』を復刊してくれたし、同じ作者で『悦楽の園』という新刊もだしてくれたし。いや、もう、二作品とも読んでる最中「うわ、うわ、うーあ、うーあ」と身悶えし布団の上をごろごろといきつもどりつしながら読んだことを思いだす。ところでいまここをみたら「日本ファンタジー界の金字塔、待望の文庫版で登場!」とあったのだけど、これはあれですか、ちくまの文庫版は完全にスルーですか? それともあれか、ピュアフル文庫の中に入りますよ、といいたいだけなのか? でもこの書き方だとジャイブの単行本として『光車よ、まわれ!』があって、そこからピュアフル文庫に落ちてきた、という風に読めてしまうのは私に読解力がないせいか。ごめんなさい。