最近、面白かった本

入江亜季『コダマの谷 王立大学騒乱劇』(エンターブレイン)
 ヨーロッパの城塞都市を思わせる街を舞台にした学園モノで、飄々とした天才(メガネ)、クールな秀才、王子、その妃候補となる気の強い娘(ただしブラコン)、メガネに恋心を抱く少年のような女の子、メガネを見守る優しい年長者……とこれでもかといわんばかりにお約束を詰め込んでいて、ツボに入るとたまりません。ツボに入りました。登場人物のその後の話も収録されているのだけど、わたしゃ何故かこの「その後の話」というやつに無茶苦茶弱いので目一杯にツボを突かれる。同時収録の「フクちゃん旅また旅」は少年とその父親が世界中を旅して回る話で、どこかで読んだ感じがしてそれが魅力なのだろうけど、そういった叙情的な意味合いではなしに本当になんだか似たようなモノを読んだことがあるような気がしてならない。気になる。この読後感は絶対に何かで味わっているはずだ。


入江亜季群青学舎』』(エンターブレイン)
 短編集。なんだか雁須磨子を連想してしまう絵と話の「白い火」が良かった。何篇かにAfter Storyが付いていて、頬が緩んでしまう。


TONO『チキタ☆GUGU(6)』(朝日ソノラマ)
 凡庸な作家なら「見せ場」なり「山場」なりと意識しすぎて変な力が入り、そのため臭みがでて読者を白けさせてしまうような場面を、淡々と描くことで逆説的に強い感動を与えてしまうその手腕というか匙加減にはいつもながらに脱帽してしまう(もちろん力いっぱい描き込んで突き抜けてしまうというのも選択肢の一つなわけではあるのだけど。中途半端がいちばんいけないということか)。それにしてもこれまたいつもながら背景白いなぁ。熊可愛いなぁ。