平坦な戦場でぼくらが生き延びるための方法序説。あるいはreverse ageということ。

 先日とうとう完結した村上もとか『RON―龍―』。最終巻となった42巻を電車の中で読んでいると、目頭が熱くなり、やがて視界が歪みだし、気づくと温かいものが頬をつたっていた。ついでに鼻からも。それはもうだらだらずるずると。我が事ながら驚く。というか気持ち悪いな。本気で泣いていた。がら空きの車内なれど向かいに座る人に気づかれぬようにと眼鏡をはずし、眼を瞑り必死で鼻をすする。ぐすぐすと。手持ちのちり紙で涙をぬぐい鼻をかみ、心を落ち着けもう一度いどむ。数ページで玉砕。なんでこんなに過剰反応するのか自分でもわからないけれど、でてくるものはしょうがない。溢れるものを堪えながら落ち着くまでと眼を閉じているうちに微睡む。結局、自宅に戻り最後まで読み進める。討ち死に。最後のページの一文に討ち死ぬ。15年間、読み続けてきて本当によかった。あのラスト、特に最後の一文はまったく予想できなかった。パズルの最後のピースがぴたりとはまる感じ。ざわりと背筋を寒気が襲う。快楽。悦楽。愉楽の極致。そこか。そこに着地させるのか、と。
 ラストといえば、昔、どこかの掲示板かなにかで最終話を妄想しているのを読んだことがあるのだけど、その内容に大笑いした記憶がある。たしかこんな内容だった。戦後、中国から密かに帰国した龍はていの故郷である岩手へゆく。そこで武専時代の友人石川の協力もあり、戸籍を変え「夏木」という苗字を手に入れる。その後ていとの間に長男が誕生する。名前は「栄一郎」。龍の指導でめきめきと剣道の腕を上げ、長じては「岩手の虎」と呼ばれるようになる。やがて大学の後輩であり、やはりその剣道の腕から「東北の鬼ゆり」の異名を持つ朝倉佳代と結婚し一児をもうける。6月3日の午後4時に生まれたその男の子の名前は……、というような内容だったと思うのだけど。いや、良い妄想だ。