ようやく筋肉痛がくる。悲しい。


 四月最後の土曜日、薄っすらと汗ばむ春光の中、不忍通りで行われた一箱古本市(http://yanesen.org/groups/sbs/)を覘きに行く。
 これは谷中・根津・千駄木エリアの書店、雑貨店、ギャラリー、カフェなど12店舗の軒先を借りて各人が持ち寄った本を売るというイベント。二、三日前ネットで知り、この地域は行った事がなかったので、天気も良さそうだし散歩がてら見てみようかと出かける。
そういえば始めて知ったのだけど「谷中・根津・千駄木」の地域を総称して「谷根千」というのね。何だか可愛い名前だ。
 事前に見た地図によると、このイベントに参加している店は不忍通り沿いに六つ、残りは不忍通りに並行するように走る裏道に点在しているようなので、どう回れば一筆書きのように綺麗に回れるか考える。ネットで見た地図では一部所在が分からないところがあり、まず各店先で配っているという地図を手に入れたいと思っていたところ、不忍通りにある「古書ほうろう」か「オヨヨ書林」が分かりやすそうだったので、どちらかを起点にしようと考える。「古書ほうろう」は西日暮里駅千駄木駅が、「オヨヨ書林」は根津駅が最寄の駅の模様。結果選択肢として、


西日暮里駅から不忍通りへ向かい、「古書ほうろう」を起点に不忍通りを進み、「オヨヨ書林」を経由して裏通りを回り、西日暮里駅へ戻ってくる。
千駄木駅から「古書ほうろう」に向かい、そこから一番近い「花歩」を経由して裏通りの店を見て回り「オヨヨ書林」を経て千駄木駅へ戻る。
根津駅から「オヨヨ書林」へ行き、そこを起点に不忍通りを攻めるか、それとも裏通りを攻めるかして、また根津駅に戻ってくる。


の3パターンを考える。
 自宅からのアクセスの便は、どの駅もあまり変わらない。さてどうするかとしばし考えた結果、何となく西日暮里にする。
 あまり早くから行ってバーゲン初日のような殺伐とした雰囲気だと嫌なのでゆっくりといこうと、午後から出向く。「古書ほうろう」に着いたのは13時位だった。店の前には本が入ったダンボール箱が並んでいる。フリマみたいな雰囲気だなと思いながら箱を除くもさほど欲しい本は見当たらず。地図とスタンプラリー用の紙を貰う。何でも各スポットでスタンプを押してもらうと記念品が貰えるのだとか。早速、一つ押してもらう。結構可愛い図柄。
で、「古書ほうろう」に入る。少し薄暗い店内には沢山の人が。古本屋でこんなに人口密度の高い空間は久しぶり。イベントの相乗効果かと思いながら店内を見て回ると、私好みの品揃え。始めて来た古本屋だけどここはまた来たい。棚を見ていると文庫本のところに町田康屈辱ポンチ』が。200円なら買うと思い値段を見るとジャスト200円。購入決定。
 ところで私は今回本を買うにあたり、こういうイベントで欲しい物を買っているときりがなかろうと予算を決めて買う事にしていた。一応、総予算は3000円位を目処に。「位」というあたりがいかにも日和っているようだけどしょうがない。まるで子供が小遣いで買い物にきているようだと思いながらも財布の中身を少なめにしてきた。これで買いすぎる心配は無いと、『屈辱ポンチ』を片手に店内を見ていると、岩波文庫の棚が。何かあるかなと見ているとパラフィン紙に包まれた古そうな文庫が六冊セットになっている。手にとって見ると、ここ最近ずっと探し、あまりにも見つからないので未だネットで買い物をするのが性に合わないと感じている私をして注文せしめかけ、ちょうど前日に値段を調べやっぱ高いなぁと長嘆の息を漏らしめていたモンテーニュ『エセー』ではないですか。狂喜し値段を見る。税込み3150円。
 一軒目から幸先の良いスタートを切る。予算オーバーと供に。
 途中にあったブックオフを覘いたり、始めて見た団子坂(D坂!)に感激したり、裏道をふらふらしたりしながら、ゆるゆると街を散策。二時間程で全てのスポットを回る。『花歩』という喫茶店の前にあったスポットで最後のスタンプを押してもらったのだけど、記念品が切れてしまったとの由。「オヨヨ書林」まで行けばあるというのだけど、面倒くさかったのでそのままにする。後は西日暮里に戻り電車に乗るだけなのだけど、まだ日も高く心地良い天気だったので、このまま行けるところまで行ってみようかと思い不忍通りを逆に歩き出す。


 結局、以下のものを購入。


・ミシェル・ド・モンテーニュ『エセー』
町田康屈辱ポンチ
・角田房子『味に想う』
古波蔵保好『骨の髄までうまい話』
・ぼくらはカルチャー探偵団 編『新・読書の快楽 ブックガイド・ベスト500』
・ぼくらはカルチャー探偵団 編『活字中毒養成ギブス ジャンル別文庫本ベスト500』


 古波蔵保好『骨の髄までうまい話』は食エッセイ。以前『日本の名随筆 26 肴』を読み、その珍しい名前と艶のある文章を覚えていたので購入。沖縄出身の作者は郷土の料理の他に各国の料理にも造詣が深いもよう。確かに目次を見ただけで涎が出そうになる。そういえば、この作者の『料理沖縄物語』を探しているのだけど中々お目にかかれない。美味しそうな沖縄料理の話が沢山語られているらしいので非常に気になる。
 二冊のブックガイドは巻頭の対談が読みたくて購入。吉本隆明×中沢新一浅田彰×高橋源一郎という顔ぶれ。ブックガイドの執筆人も中々豪華。これは責任編集者(?)安原顯の人脈なのかしらん。だとすればさすが。