鍋は鏡であり、豚が鏡を覗き込んでもサヴァランが覗き返すわけではない


 お腹が減ったので何か食べようと冷蔵庫を漁るも何も発見されず、しかたなく野菜貯蔵庫(別名ダンボール箱)を探すと朽ちかけた大蒜が一株ころがっていた。ペペロンチーノでも作ろうかと思案するも面倒になり、熱したスキレットに大蒜を丸ごと入れて蓋をする。ローズマリーでも入れてみようかと思ったが無論そんなものはない。極弱火で十五分ほど熱し蓋を開けると中々美味しそうな匂いを発しているので皿に取り出し一粒一粒皮を剥きながら塩で食べる。銀杏でも食べているような気分になってくる。気づくと丸々一株食べていた。お腹がとても痛くなってきたのはそれからすぐの事だった。やはりペペロンチーノにするべきだった。