美味しいお酒というのは何であんなに美味しいのだろう。


 さて何から書くべきか。嬉しくなる話を立て続けに知ったので些か混乱している。普段から情報収集を怠っていると、こういう時楽しさが大きくなる。二つ重なれば倍ではなく二乗。三つ重なれば三倍ではなく三乗。うふふふふ。


 河出書房新社から山田風太郎忍法帖シリーズ』の刊行が開始されたらしい。長編に的を絞ったものらしいが、そんな企画があったとは全然知らなんだ。今日たまたまネットを徘徊していて知り、尻切れトンボになった他社の企画を思い出しながら冷ややかに狂喜する。早く本屋で実物を見たい。明日見よう。河出書房新社といえば以前『山田風太郎コレクション』で山風の幕末・明治モノを出していたけど、私は装丁が気に入らなかったので、ちくま文庫で購入している。
 幾つかのサイトを見てみると、どうやら今回の企画では『信玄忍法帖』に続いて『外道忍法帖』『忍者月影抄』の刊行が確定し、最終的にはあの『忍法相伝73』が出るかもしれないとのこと。本当か?本当なら嬉しいけど。約40年ぶりに日の目を見るということか。
 『忍法帖』シリーズは多々あれど、『忍法相伝73』は長編の中で唯一、現代を舞台にした作品(の筈)。以前、山風が雑誌の企画で自己作品の評価を求められた時、ABCの三段階評価だったにも拘らず、評価P(最低ランク)をつけたとか、あまりの駄作故に復刊を許さなかったとか、読んだ人皆あまりの下らなさに絶句するしかなかったとか、色々な噂を伝え聞いているけれど、その感想は殆どクリシェの感もあり、「下らない」といいあって喜んでいるだけなのではないかとか、読んだ人間同士が互いに読んだ事を確認し合うために口にしているのではとも思え、中には未読の人間に向けて優越感を滲ませるような語り口もあり、聞いていて何だかなと思うこともあったり。「誰も読まないような*1下らない作品を読んでいる私って〜」という自意識を垂れ流されてもなぁ、と自戒の意味でも思ったり。あー、でも、私の知り合いのこういう自意識に縁の無さそうな人で、件の本を読んだ人がおり、以前その感想を聞いたところ、一言「山風だよ」といわれたのには何だか納得した記憶があったり。

 
 それにつけても装丁の絵が藤原ヨウコウ改めるところの森山由海というだけで購買の意欲はいや増すばかり。山風と藤原ヨウコウの組み合わせといえば、廣済堂の『いだ天百里』くらいしか思い出せないのだけど好みの絵柄なので楽しみ。
 山風作品の装画では、角川版の佐伯俊男の濃厚なエロティシズムが噎せ返る程に匂い立つ絵や講談社版の天野喜孝の流麗な線も好きなのだけど、やはり山本タカトの妖艶さが一番なわけで、すると現在刊行中のちくま版『山田風太郎忍法帖短篇全集』を買わざるを得なくなり日々嘆息。収録されている作品は殆ど持っているとはいえこの装画は捨て難い。ボーナストラックもあるし。そう考えると、とても安い。でも、それはあくまでも相対的に安いのであって絶対的には高いんだよな…。


 最近友人に、雁須磨子『どいつもこいつも』という漫画を貸してもらい、一読、とても気に入ったので、自分でも購入しようかと思っていた矢先、ワイド版が出るを知る。しかも今月。買わなくてよかった。これも宿世の定めかと喜ぶ。未収録10話、書き下ろしを含む完全版のもよう。他にカラーイラスト、ショートエッセイコミックなんかが収録されているらしく非常に楽しみ。
 自衛隊を舞台にして、隊員の日常を描く作品。一応、作品を通して、主人公格の女性自衛官(WAC)と彼女に恋する上官の話が語られているけど、物語を進めるための方法であって、主眼はそこではないんだろうな。登場人物の距離感がとても良い。作中に引用される文章から察するに作者そうとうの読書好きと見た。キャラのデフォルメによる笑いのテンポ、気の抜き方もとても好み。たまにやたらとデッサン的なというか写実的な絵が出てくるのは何なのかとも思いながら。作品から受ける飄々とした持ち味は川原泉に通じるかも。心地よく読める作品。


 同級生が結婚するという話を聞く。以前からその話は聞いていたのだけど、昨日、本人から直接その話を聞き、何だか感慨を覚える。あー、そういう歳なのよね。私の耳は人の幸福話を聞くと大抵右から左へ抜けてゆくように出来ているみたいなのだけど、今回は別みたい。掛け値なしにめでたい。何だかとても嬉しくなる。
 飲み屋でお酒を飲みながら聞いたのだけど、その店がまた非常に美味しい料理を出すところ。五人でいったのだけど、一人は車なので飲めず、一人は下戸なので飲まず、残りの三人でちびちびと飲んでいたら、連れて行ってくれた人がとても日本酒にあう肴を立て続けに注文し、気づくと私は2合近く飲んでいた。この量は私の酒の弱さを考えるとかなり多い。結果、今朝まで酒が残る。起きるのが非常に辛かった。やっぱりもう少し飲めるようになりたいなぁ。

*1:まあ、読もうにも物理的に読むのは難しいのだけど