ヘツケル博士! わたくしがそのありがたい証明の任にあたつてもよろしうございます


 以前友人がカラオケで歌ったのを聴いて気になっていたクラムボンとかいうバンドを最近ようやくちゃんと聴きすっかり気に入る。家であまり音楽を聴かない私は、データを詰めたipodを持ち歩き散歩しながら聴くのが好きなのだけど最近はヘビーローテーション気味にクラムボンばかり聴いている。今日は『imagination』をリピートしながら街中をふらふらしふと思い立ち以前から気になっていた美容室に向かう。
 中々に綺麗な店内は最近の美容室によくあるような全面ガラス張りの光溢れる感じではなく落ち着いた雰囲気。あの光溢れる感じが苦手な私としては薄暗いくらいの方が落ち着くのでほっとする。
 イスに座ると、どうしますかというので、かなり伸びて鬱陶しくなってきていたし夏だしここは一つ爽やか気分になろうかと、ついてくれた美容師さんにその旨を伝える。
 やたらに話し好きな美容師さんで、雑誌に目を落としているにも関わらず果敢に話しかけてくる。趣味はなんだ、休みの日はどうしてる、もう梅雨もあけたというのにむしむしするけど本当に梅雨は明けたのかなどの話を経て、やがて実家の話になる。この歳になると実家に帰るたびに結婚はまだか、いい人はいないかと言ってくるのが親ならばまだしもうちは田舎なので数だけはやたらに多い親戚連中の干渉がひどくやれうちの子供達はどうしたのAちゃんはもう二人目が生まれたのとろくすっぽ顔も覚えていないイトコの話を聞かされうんざりしちゃいますよ、お客さんのところはどうですかというので、親はともかくうちも確かに親戚が結構煩いので田舎はどこも同じなんですかね、と答える。どこの出身かと聞かれたので答えると彼女は驚いたような顔になった。聞くと同県者だった。聞けば三つはなれただけの駅。歳を尋ねると私の一つ上。学校の事を尋ねると私の友人も通っていたところだった。世界は狭い。
 しばし地元の話になる。しかしながら遊んでいた場所がかけらも被っておらず何だかいたたまれない気持ちになってきたので話を合わせる事にする。服ならやっぱり〜とか〜とかですよね。あとは〜とか。ああ、あそこいいですよね。〜(友人に聞いたことのある店名。地元では有名だったらしい)も良かったですけど。あ、お客さんもあそこいってたんですか、うわーもしかしたら会ってたかもしれませんね。はは、そうですね。