周期性カレー症候群


 そろそろ来るかと思っていたら来た。家路についていると無性にカレーを作り食べたくなる。こうなると我慢がきかない。材料を買うため来た道を引き返す。
 どうやら私にはカレー周期のようなものがあるようで、これまでの経験からいって四ヶ月毎くらいに訪れるような気がする。記憶にあるかぎり前回は一月の前半辺りで、その前は九月の半ば辺りだったのでそうズレてはいないようだ。ただ、一月はカレーを作る暇が無いくらい忙しく、ばたばたしているうちに周期が過ぎたし、その前は食事を作れる環境になかったので、久しぶりに訪れたこの感覚に戸惑い気味。以前はこの周期がもう少し短かったような気もするけど覚えていない。別に子供の頃からという事も無く、気づくとこんな体質になっていた。一番古い記憶は四年程前なのだけど、それは別にその時読んでいた竹内真『カレーライフ』に影響されたとかそういう事では無かったように思う。形は違えど、きっと誰もが一度は通る道なのだろう。そういえば『カレーライフ』に書かれた「ラフテーカレー」を作った記憶がある。あれは美味しかった。
 一度始まると2、3日続きその間寝ても覚めても何を見てもカレーの事に頭が行き、気づくと終わっている。この時期を越えるとさほど作りたくも食べたくもならないので、やはり周期性のものなのだろうと思う。横文字にして「periodicity curry syndrome」、略して「p.c.s」とか言えないだろうか。何となく格好良い気がする。「先生、p.c.sの急患です」「何だまたか。この季節は多いな。取り合えずスパイスを調合して与えておきなさい」「先生、スパイスの配合はどうしましょうか」「ああ、クミンとコリアンダーは多め。カーダモンは控えめで。クローブは入れすぎないように」みたいな。思えば漢方薬みたいなものだしな。

 今回の気分はチキンカレーだったので、まず鳥のモモ肉を購入。本当は骨付きの方が良いダシが出て美味しいのだけど、モモ肉が安かったので今回はこれで。他に生姜、ヨーグルト、ニンニク、トマトの水煮缶、サラダ用のベビーリーフハーブミックスを購入。チキンカレーは玉ねぎを炒める過程が面倒くさいのだけど、以前作っておいた玉ねぎのペーストが冷凍庫にあった筈なので今回はかなり楽。帰宅後すぐに調理開始。クッキングペーパーで鳥モモ肉の水気を拭き取り、一口大に切る。それをボウルに入れ、塩・胡椒・シナモンを塗しつけ、ヨーグルトを加え手でよく揉みこむ。30分くらい寝かせるので、その間に着替えをすませたり色々する。冷凍庫を見ると、玉ねぎペーストはあった。よかった。中華鍋に油を多めに敷き、みじんに切ったニンニクと生姜、種を取った唐辛子を一本、クミンをホールのまま適当に入れ点火。極々弱火で焦がさないように香りを出す。冷凍していた玉ねぎペーストを加え、弱い中火でゆっくりと炒める。玉ねぎペーストが溶けて全体が馴染んできたら、クミン、コリアンダー、カーダモンを振り入れる。ちなみにこれらは全てパウダーを使用。弱火で香りを出しながら暫く炒め、そこに汁ごとホールトマトを入れ中火で煮る。汁気が少なくなってきたところで鳥モモ肉を加えよく混ぜる。鳥モモ肉の色が変わったところで全体が浸るくらいの水と大匙一のジャム(適当に何でも。今日は冷蔵庫にあったミックスジャムを使用)を加えアクを引きながら30分くらい煮込む。最後に味見をして塩加減を整え、ガラムマサラを加え5分くらいも煮て出来上がり。オリーブオイル・塩・胡椒を混ぜたもので和えたベビーリーフハーブを皿に盛り食卓に持っていく。いただきます。


 ご飯で食べる。ちょっと塩気が強く攻撃的な味になった気もするけれど、久しぶりにしてはスパイスの加減も間違えていなかったようで中々美味しい。それにしても、ご飯も良いけどこれはナンで食べたい。熱々のナン。ギーの香りがぷんとただよう焼きたてのナン。外はぱりぱり中はもっちもちの熱々の甘いナンを指でちぎって浸して食べたい。


 さて明日はどうしよう。牛か羊か野菜か豚か。タイ風カレーにするか、欧風カレーかネパール風か。定番中の定番日本の家庭風か。カツオの風味漂うもったりとしたおそば屋さんの和風カレーか。ご飯かナンか、そばかうどんかチャパティか。何でもこい。
それにしてもデジカメが欲しくなってきた。